代表の稲田礼子です。
本コラムは、私が日頃の産業医活動の中で行なっている講話から、一部をご紹介するものです。健康経営※に取り組む皆様のお役に立ちますと幸いです。
熱中症とは「暑熱による諸症状を呈するもの」のうち、他の疾患(感染症など)を除外したものです。暑熱環境(暑い時、運動や活動)に居る、あるいは居た後の体調不良はすべて熱中症の可能性があります。
熱中症で救急搬送された人数は、令和3年5月~9月にかけ約50,000人です。前年は6万人以上が救急搬送、110人以上が死亡しています。今年においても引き続き新型コロナ感染症対策の影響で熱中症のリスクが高いことが予想されます(マスク着用が体温を下げる妨げになる、水分摂取が減る(マスク着脱の手間、喉乾きにくい)、自粛で運動機会が減少し暑さに慣れていない等)。そのため、暑くなる前からしっかり対策をとる必要があります。
WBGT(暑さ指数:Wet Bulb Globe Temperature)
WBGTは人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい①湿度、②日射・輻射(太陽光や地面からの照り返しなど高温の物体から直接・間接に受けるもの)など周辺の熱環境、③気温 の3つを取り入れた指標です。単純に気温だけでなく、人体の熱バランスに影響の大きい湿度や日差しの影響などを加味しています。WBGTが28℃を超えると熱中症患者は著しく増加します。
WBGTは環境省サイトを中心に多くの場で予測値が発表されていますが、これらのWBGT予測値はあらかじめ想定された環境下での数値であり、周囲の建物や設備による影響や日射・風の状況により、実際の現場環境とは乖離が出てきます。実際の現場でも可能な限りWBGTを測定し熱中症に備えること、また測定できない場合でも気温などを測定し、暑さに対し常に注意を払うことが重要です。
※健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。