本コラムは、日頃の産業医活動の中で行なっている講話から、一部をご紹介するものです。
健康経営※に取り組む皆様のお役に立ちますと幸いです。
本格的な夏が来る前に、事前の確認を
例年、7月から8月は熱中症による死傷者数が最も多くなる時期です。今後さらに気温が上昇し、リスクは高まっていきます。
本格的な夏を迎える前に、職場における熱中症予防対策や、熱中症の発生状況、事業所として求められる対応について、改めて確認しておきましょう。

職場における熱中症の現状:死傷者数は過去10年で最多に
厚生労働省のデータによると、職場における熱中症の死傷者数(死亡者および休業4日以上の業務上疾病者数)は、過去10年で最多となっています(2016~2025年)。
2025年の速報値では死傷者数が1,681人に達した一方、死亡者数は15人と、前年(30人)から半減しています。
これは、熱中症が重症化する前に現場で発見・対応できているケースが増えているためと考えられます。背景には各職場における熱中症対策の強化が大きく影響しています。

改正労働安全衛生規則による「早期発見・体制整備」の義務化
2025年6月1日より、改正労働安全衛生規則が施行されました。今回の改正は「見つける・判断する・対処する」を基本方針とし、熱中症の重篤化防止を目的としています。
対象となる環境下(※)で作業を行う労働者について、熱中症の兆候がある者を早期に発見し、迅速かつ適切に対応することが事業者に求められるようになりました。具体的には、以下の対応が義務付けられています。
(※対象:WBGT値28℃以上または気温31℃以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超えて実施が見込まれる作業)
・報告体制の整備
・対応手順(プロトコル)の作成
・関係作業者への周知・教育
法改正に基づく対応が進んだことで、以前であれば見逃されていたり、現場判断で処理されていたりした「軽度の熱中症症状」が適切に把握・報告されるようになりました。
その結果、労災(休業4日以上)としての報告件数が押し上げられ、グラフ上は熱中症による死傷者数が過去最多となっています。しかしこれは、熱中症の早期発見・早期対応が機能していることによる結果とも捉えられます。 今後は、単に死傷者数の増減だけに注目するのではなく、重症化や死亡を確実に防げているかという視点が重要になります。
熱中症は正しい知識と適切な対策によって予防できるため、日頃から体調管理と暑熱対策を心掛け、安全に夏を乗り切りましょう。
参考:
1 厚生労働省 2025 年(令和7年) 職場における熱中症による死傷災害の発生状況 (令和7年 12 月末速報値)
2 厚生労働省 職場における熱中症対策の強化について(令和7年6月1日施行)
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