本コラムは、日頃の産業医活動の中で行なっている講話から、一部をご紹介するものです。
健康経営※1に取り組む皆様のお役に立ちますと幸いです。
2月に入ると、「まだ本格的な春ではないのに、鼻水やくしゃみが出る」「目がかゆくて集中できない」といった人が増えてきます。
花粉症は単なる不快症状ではなく、仕事の集中力やミスの増加、眠気にも影響する健康課題として注意が必要です。
今年の花粉症飛散の傾向
日本気象協会の花粉飛散予測※2によると、スギ花粉は2月上旬に九州や東海などで飛散開始となる予測されています。
九州から関東の広い範囲では2月中旬、北陸から東北は2月下旬から3月中旬の見込みで、暖かい日には花粉がわずかに飛び始める見込みです。
スギ花粉の飛散ピークは、早い所では2月下旬から、広い範囲でピークとなるのは3月上旬から中旬、ヒノキ花粉のピークは3月下旬から4月上旬の予測です。
2026年の花粉飛散量は前シーズンと比べ、西日本では広い範囲で減少、東日本と北日本は前シーズンより多く、非常に多い所もある見込みです。
花粉症とプレゼンティーイズム
欠勤にはいたっておらず勤怠管理上は表に出てこないが、健康問題が理由で生産性が低下 している状態のことをプレゼンティーイズムといいます。
花粉症の症状もプレゼンティーイズムを引き起こす要因であることが知られています。
鼻づまり、目のかゆみ、くしゃみといった症状により、日中の集中力や注意力の低下、パソコンの画面が見えづらくなる、ケアレスミス増加など仕事のパフォーマンス低下を引き起こします。
ある研究※3によると、飛散が増える時期に花粉症を持つ労働者の生産性が低下することが確認されており、増加した花粉飛散と作業効率の低下には相関があると報告されています。
また、花粉症の薬を使用しない人では約10%の生産性低下が見られたという結果も出ています。
早めの花粉症対策を
花粉症対策で最も大切なのは、症状が強くなる前から対策を始めることです。
例年症状に悩まされている人は、早めに受診して適切な治療を受けることを推奨します。
花粉症治療以外にもできる対策もいくつかあります。
- 職場でできる対策
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- 換気の工夫
- 花粉が多い時間帯(午前中・夕方)の長時間換気を避ける
- 空気清浄機の活用
- 清掃・花粉の持ち込み対策
- 床・デスク周りのこまめな清掃を呼び掛ける
- 上着についた花粉を室内に持ち込まない導線を確保する
- 玄関マットの設置
- 労働者への健康教育
- 換気の工夫
- 個人でできる対策
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- 外出時のマスクや眼鏡着用
- 髪の毛への付着を防ぐため帽子着用
- 帰宅後の手洗い・洗顔やうがい、鼻をかむ
- 衣服はニットなどを避け、表面が滑らかな化学繊維を選ぶ
- 洗濯の際には柔軟剤を使用して静電気を防止する
- 洗濯物は室内干しにする
- 部屋の加湿を心がけ、床に落ちた花粉を掃除する
花粉症は軽症でも仕事のパフォーマンスに影響しやすい不調です。
近年、プレゼンティーイズム対策は健康経営の重要な視点として位置づけられており、花粉症への職場対応もその一環といえます。現場の実情を踏まえ、個人のセルフケアと職場環境の工夫を組み合わせて考えていくことが、健康経営の実践にもつながります。
※1 健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です
※2 日本気象協会 tenki.jp
※3 Crystal-Peters, J., Crown, W. H., Goetzel, R. Z., & Schutt, D. C. (2000).
参考:
- The cost of productivity losses associated with allergic rhinitis.
- Journal of Occupational and Environmental Medicine, 42(1), 90–98.

